ボクが「ぴあの男子」になった理由

ピアニストインタビュー
ぴあの男子ゆうちゃん(ピアノインフルエンサー)

一本のショートムービで気づかされたこと

卒業後、短期のバイトをしながら『17LIVE』などの場に作品を投稿。『YouTube』への投稿ペースも上げていく。ただネットの世界ではアーリーアダプター(初期採用層)が強くシェアの多くを握るのが定説。<ゆうちゃん>が『YouTube』の投稿ペースを上げた時点では、ストリートピアノ動画はすでに多くの先駆者たちがいた。

 

「正直すでにレッドオーシャン(競争の激しい市場分野)でしたね。もしこれを大学在学中に始めていたらもっと早く結果が出ていたかもしれません。当時はストピ関連のコンテンツは出せばBUZZる状態。実際<ハラミちゃん>、<けいちゃん>など早くにコミットした人が今、カリスマ的な位置にあります。その意味では後発のボクは 『YouTube』ではなかなか結果が出ませんでした。そんな時『TikTok』(スマホ向けのショートムービー投稿・共有サービス)に最初にあげた投稿がいきなり100万回再生を超えたんです。このことが『ピアノのショートムービーにはまだ定型がない』、『若年層へのアピールができるかも』、っていう気づきを得るきっかけになりました。実際それまでの『YouTube』のピアノコンテンツのコアな視聴者層って比較的年齢層が高いのに対して『TikTok』は行っても30代くらいまで、まったく新しいものがここでつくれるんじゃないか、それを自分が引っ張っていけるんじゃないかと思ったんです」

 

最初にTikTokに投稿した動画は一見不良風の若者に扮した<ゆうちゃん>が周囲から「BTSのダイナマイトか弾ける?」とリクエストを受けて、ぽつぽつと弾き始め、周囲が「やっぱりそんなものか」と思った瞬間に超絶テクを披露する内容。最長撮影時間60秒という短い時間。一般的には音楽コンテンツとの親和性が低いと思われがちなショートムービーだが、その短さを逆手に取って短時間で物語が急展開する面白さ、短いがゆえのキャッチーさを備えたコンテンツだ。

 

「始めた頃はまだ『TikTok 』でのピアノものは少なくて、どうしたらこのプラットフォームで楽しんでもらえるコンテンツが生み出せるかを試行錯誤していました。最初に投稿した一見ただのイキった若者が周りの一言でいきなり実力発揮とか、弾き方のチュートリアルにしても『ここをこうするとかっこいい』、『絶対モテる弾き方』と言った切り口で『YouTube』とは違った工夫をしています」

ショートムービーならではのインパクトや面白さを綿密に盛り込んだ<ゆうちゃん>のTikTokチャンネル。

「一見するとTikTok動画は、ただ面白おかしくふざけているように捉える人もいるかもしれません。けれど短い動画を人が見て楽しいもの、見るに値する価値を生み出すように僕なりにものすごく考えて戦略的につくっています。そうした作為的なことを『音楽と関係ない』という人もいるでしょう。でも思うんですよ。人に喜んで面白いと思ってもらえるものを生み出すのと、仮に自分は良いと思っていても誰にも興味を持たれず、評価されないことをただただ貫くのとどっちが意味あることなんだろうかって。アーティスト、クリエイターならば自分が出したアウトプットを楽しんで観てくれる人がいて、そこに価値を見出してくれる、その関係が成立 することが重要なんじゃないかって。その関係性があることで自分の心も豊かになるし安定する。それがあってはじめてその先の一歩を踏み出せるって思うんですよ」

 
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