ボクが「ぴあの男子」になった理由

ピアニストインタビュー
ぴあの男子ゆうちゃん(ピアノインフルエンサー)

一番怖いのは批判や嫌いではなく「無関心」

<ゆうちゃん>の『TikTok』動画を見ると、その中にやや刺激的な内容のコンテンツがある。それは音大の『あるある』や、卒業後の収入などを面白おかしく表現したものだ。

 

「茶化しているように見えるかもしれないけれど、ボクとしては音大生へのエー ルを込めたつもりです。自分たちの現状に気づくことから始めようって。音大で学んでいることってすごいことだし、音大って素晴らしいと思ってます。だからひとつの価値観だけを正解とするんじゃなくて、いろんな可能性にトライすべき。その時に物差しになるのが、自身の芸術性だけでなくて、聴く人の立場になって考えてみるってこと。周りの友だちでもいいし、ボクの場合はそれがSNS。そんなふうに視点を少しずらして自分のできるアウトプットを改めて見ることで、それまで思ってもいなかった価値に気づけると思うんです」

 

「自分が一生懸命やっていてもなかなか認められない。そうすると人って他者にその不満をぶつけがちですよね。それが一番簡単だから。『世の中がおかしい』『あいつら何も分かっていない』とか。それってすごく簡単なんだけど、そこで思考 停止しちゃうと前に進まないじゃないですか。こういうことを言うとまた怒られるかもしれないけど、ただ自分の中に閉じこもっちゃって前に進めないとしたら、『何バカなことやってるんだあいつ』って思われてるボクの方が社会に受け入れられてるし、大袈裟に言うと『ボクの方が音楽で世界を救ってませんか?』って言えないですかね(笑)」

 

今、<ゆうちゃん>は自身の作品を<TikTok>をはじめとしたSNSに投稿する傍、その経験知を活かしてコンサルなどを通じたTikTokerの育成などを行なっている。

「むしろボクがやりたいことは、ただ自分の投稿を拡散させるのではなくて、同じように活動する人を増やすこと、偉そうに言うと育てることですね。そうした人たちが日常的に活動できるリアルな場をつくって、ネットとリアルを結びつけた成功事例をつくりたい。たとえばAKB劇場みたいに、毎日、ボクや仲間たちがいて演奏を披露できるピアノバーがあれば。そこで<TikTok>ではできない表現ができるだろうし、その場をきっかけにイベントやそれぞれの自己実現につながる活動へと結びつけることもできるんじゃないかな」

 

「大好きな音楽の道に進んで、一生懸命努力して、だけどそれで食べられるのはほ んのひと握りっていうのはやはりおかしいと思うんです。だから批判されるかもし れないし、煙たがれるかもしれないけど『大好きな音楽で生きるってこう言うやり方もあるよね』ってことを示したいんです」 

スタジオに置かれたヤマハリニューアルピアノ®を弾く<ゆうちゃん>。「リニューアルピアノならではの仕上がった素直な音 、鳴り」を楽しむように一時間ほど弾き続けた姿が印象的だった。

 

<ゆうちゃん>のインタビューを行ったスタジオにはヤマハのリニュールピアノ® が置かれていた。『自由に弾いていい』と分かると、彼自身が『弾き始めるとすぐに素直に鳴ってくれる』と表現したリニューアルピアノならではの音色を楽しみながら、<ゆうちゃん>はおよそ一時間近く一心不乱に弾き続けた。その姿はただただ『ピアノが好きでたまらない』青年そのものだ。

 

「『ピアノを利用してる』とか、『ピアノはきっかけで別になんでもいいんじゃないの』とか言われるんだけど、ボクは本当にピアノが好き。多分そのベースがなければ人の心を動かす、見ようと思ってくれる動画なんてつくれないですよ。時間の短いショートムービーだって見透かされると思う。視聴者は簡単にそんな嘘に気づきます。その意味ではボクはピアノだけど、楽器だけはなくて、自分が頑張ってるもの、愛して努力しているものを、何らかの形で表現することができる時代です。ボクの活動でそんな人の背中を少しでも押すこと、何か手伝うことができたら嬉しいですよね」

 

もちろん<ゆうちゃん>が言うように、インターネットには大きな可能性があり、多くのクリエイターが活動の大きな中心として捉え始めている。ただその一方で不特定多数の評価と向き合う厳しい世界でもある。心ない中傷や否定とも向き合わなくてはならない。一部にはその怖さから 一歩を踏み出せないでいる人もいるのではないだろうか。

 

「好きの反対は嫌い。そんな嫌いと向かい合うのは辛いって思うかもしれないけど、嫌いや批判っていうのは反応があることじゃないですか。反応ってのは関心であって、自分はそれをポジティブに考えているんです。『この嫌いをどうしたら好きに変えられるのかな』『どうしたら喜んでもらえるのか』って。ボクが一番怖いのは無関心なんですよ」

 

<ぴあの男子ゆうちゃん>の物語はまだ始まったばかりだ。

ぴあの男子ゆうちゃん
ピアノインフルエンサー
桐朋学園大学を卒業し、国際コンクールで優勝するなど優秀な成績を収めていたが、卒業後SNSの可能性に興味を持ち17LIVEなどで活動を始める。
TikTokに初投稿したストリートピアノの動画が180万再生。現在YouTube登録者3万人、TikTokフォロワー11万人突破(2021年6月現在)。今一番勢いのあるピアノ系YouTuberの1人。現在は自身がピアニストとして活動しながら、ピアノ教室運営、イベント事業、コンサル業も手掛けている。コンサル生がTikTok1ヶ月で5万フォロワー、初投稿20万再生、200万再生達成等の成果を挙げている。
https://site-4097835-5055-9854.mystrikingly.com/

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